Mostly, this is diary.
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夜の人影
私は小学校高学年だったろうか、中学生になっていたろうか。
夏の夜、東側の窓を開けたまま眠った。
ほとんど風のない暑い日だった。
眠ったらいつも朝まで目は覚めない。
それでも僅かな月明かりの奇麗な夜だったので、白く薄いカーテンを引いただけにしておいた。

夜半にふと目が覚めた。
右足がズッシリと重い。
すごく重い。
どうしたんだろう。

起き上がって少し上体を起こすと、私の右足の上に小さな人影が映った。
小柄なおばあさんが和服を着て座っていた。
どうしたんだろう。
こんな夜更けにそんなところに座り込んで。
向こう脛なぞ骨が邪魔で座り難いのに。

また少し体を起こして彼女を見てみるが、話しかけてくる様子はない。
彼女は私から少し顔を背けて東を向いている。
黙って座っている。
カンザシをしているようだが色も分からないし顔もよく見えない。

ただ重みはペットのものではない。
軽いけど人が腰掛けている重みそのものだ。
ただ彼女は私の足と知って座っているようだ。
彼女は怒る様子も怖がる様子もない。

座っていたいんだろうか。
ただここに座っていたいんだろうか。
だったら好きにすればいい。
用があるのなら話しかけて来るのだろう。
誰がいるか分かりさえすれば、横になってるほどの耐え難い苦痛はなかった。
幸い彼女は耐えられないほど重くはなかった。
そっとしておこう。

私は何も言わないで横になって目を閉じた。
目を閉じても彼女がいることを感じた。
眠りに落ちていくと共に、次第に右足の重みは軽くなっていった。
辛くはなくなった重みがまだ足に乗っていた。
誰なんだろう。

翌朝、私は夢の風景が朝を迎えたことを知った。
家は典型の核家族で同居の祖母はいない。
父方も母方の祖母も健在だ。
彼女たちはカンザシを使うほど髪を長くしていない。

屋内で飼っているペットもない。
外では犬を飼っていたから、2階の私の部屋に猫が入ってきたことは一度もない。
開いていた東の窓は腰窓のアルミペアガラスサッシで、動物が開けられる重さではない。
確認したが、夜の家に私の部屋に入ってきた家族もなかった。

何も言わないまま、夜の人影は跡形もなく消えた。
足の重みも何事もなかったように消えていて、右足には怪我も痣も何も残ってはいなかった。
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