Mostly, this is diary.
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「お前達はさっき何をしていたんだ。」
「何って? 伯父さんのことを話していました。」

意外な質問だった。
よく考えてみれば伯父さんは、私が振り向いたときに暗い路地のブロック塀と向き合っていた。
しかし伯父さんは直接この路地に入ってきたのではなく、1ブロック先から回り込んで来たようだった。

「他に何をしていたんだ。お前が座り込んでしていたことだ。」

「座り込んで...ああ、確かこうやって座り込んで、手を繋いで貰っていました。」

「それだけか?」

「はい。やってみましょうか。」

路地のアスファルトは冷えていたが、座り込むのにさほどの抵抗は感じなかった。

「こんな感じです。それで、手を借りてこうしていました。」

「違う。何か違うことをしていた。」

「そうですか?」

「私にも同じようにしなさい。」

パニックに陥って、困って、慌てて何か話して、失望して、座り込んで...
ああ、そうか。

「こんな感じなんですけど。これでいいですか。」

「こんな感じなんですけど。これでいいですか。何か冗談でこんなことするのっておかしいですね。人間て感情があるから...」

「...よし。」

驚くことはたくさん続いた。
伯父さんは舌を出していた。
外国の挨拶をするようにして、閻魔大王のように指で下をギュッとつまみだしてみた。
さすがに少し痛がった。
やっぱり伯父さんどこかちょっと不思議な人だな。
世代が違うからかな。

「伯父さん、干支は何でした?」

「寅だ。」

「奇遇ですね。私の父と同年なんですね。」

...

「驚かれました? 最近年齢を聞くのは失礼かな?っと思ったら干支を伺うことを覚えたんです。これって良い方法でしょ。」

「俺はショックだ。お前の親の方が年上だったのか。しかも伯父さんは末っ子だ。俺の親と伯父さんの間には兄弟がいる。」

甥はありのままの語った。

「誰、その兄弟。まんや?」

「『まん』じゃない。」

「どんな顔なの?。」

私は漢字が苦手で、特に人名や地名が苦手だ。
たまにとんでもない読み方をしてしまう。

「狼。」

「怖くてカッコイイ感じなんだ。そういえばウィル・スミスは、『子連れ狼』が好きだっていってた。無類の時代劇好きらしい。」

「だからなんなんだ。」

甥はあくまでにこやかに言う。

「うん。時代劇ってインターナショナルだなと...。でもね、伯父さん小柄で驚いた。もう少し背が高いと思ったんだ。」

「お前、伯父さんは俺の伯父さんだ。誰だかわからなかったくせに。」

「だって暗かったんだもん。」

「暗くなきゃわかったのか?」

「いや、わからなかったかもしれない。それがまた良いの。ね、お願いがあるんだけど...」

「何だ?」

「あのね。伯父さんて、結婚してる?」

「本人がいるんだから、本人に聞いたらどうだ?」

「伯父さん、もし結婚していなかったら、私のことお嫁さんにしてくれないかなっ。」

「...!」

これがまた暗くて伯父さんの表情はわからない。
実際、かなり唐突ではあったと思う。

「お前本気なのか?」

「半分本気で半分冗談。だってふられるに決まってるもん。」

「でもね、もし万が一お嫁さんにしてくれたらすごく大事にしちゃう。ただね、夜眠るとき可能な限り一緒にいたいなって思う。」

「一緒にいるだけなら他の男でもいいんじゃないか?」

「一緒にいるだけじゃ駄目なんだよね。それに誰でも良いって訳じゃない。ご飯もできるだけつくるし、伯父さんならもし倒れても、介護もちゃんとする。」

「伯父さんがお金持ちだから行くのか?」

「そうなの? でも自分の分は自分で稼ぐよ。医療保険は自分でかけて貰うけど。」

「保険金目当てか?」

「違うって! 正式に配偶者じゃないと保険は下りないの。保険は入院費用や治療費の方を心配してるの。」

「俺は違うと思うぞ?」

「まあまあ、いいじゃん。希望を申し述べてるだけだから。伯父さんに誰もいないわけないでしょ。でも、ちょっとでも好きだって伝わったらいいなって思っただけ。」

「...わかってて、どうして伯父さんにプロポーズするんだ。」

「どうしてって、まず...伯父さんかなり好きだったし、伯父さんとって私は初対面でも、私は厳密に初対面でもないから。それから好き過ぎないし。」

「好き過ぎないって?」

ずっと沈黙を守っていた女性が話しかけてきた。

「過ぎたるは及ばざるが如しって、好きすぎると束縛しちゃうんですよね。出先で彼女作って欲しくないし、可能な限り一緒にいたいなと思ったら束縛しちゃう。それじゃ若い人ははたまらないでしょう?」

「待て。何かおかしいぞ? 伯父さんなら束縛しないのか。」

「うん。逆にガンバレっておもっちゃう。例えば70代の人に子供ができたりしたら、いいぞ! 頑張れって心から思う。そういうのって賞賛に値すると思う。そんな感じ。」

「じゃ、伯父さんは好きじゃないってことか?」

「違う違う。好きだけど、無用な嫉妬を抱かなくて良い『ジェネレーションギャップ』があるの。憎まなくていい距離。お互い若いと好きだから『仕返し』したり、憎む努力をしちゃうから。そういう無駄なことにエネルギー使いたくないの。」

「じゃ、お前は好きな人を憎むのか。」

「そうだったかも。でも、好きな人に危害は加えたくないから『仕返し』は自分にする。」

「自分に...?」

「うん。」

「プロポーズ、他の奴じゃダメなのか?」

「うーん。結婚したい人ってなかなか会ったことない。ひねくれた考えかな? 伯父さんは『運命の人』じゃないけど、私が精神的な安定を得る意味で正しい選択だと思う。」

暫く沈黙があって、女性の声が私の話を否定した。

「私は認めません。」

「俺も嫌だ。」

あ、否定だ。
なんてしっかりした意見なんだろう。
こういうの好きだな。

「私は...わけがわからない。これは何かの冗談なのか?」

伯父さんは混乱していた。
そっか。
イキナリこんな話したって無理だよな。

「伯父さん。大丈夫。最初に言ったでしょ、半分冗談で半分本気だって。私、振られるのは嫌だからお返事しないでね。」

「返事するなって...私はどうしたらいいんだ。」

「気にしないの。気にしなくって良いの。何かさっきから一緒にいて貰って凄く嬉しかったの。もしかして一緒にいてくれたら幸せになれるかもって思っちゃって。ありがとう。気にしないで忘れて良いよ。」

「待て。お前は本当にそれで良いのか。」

伯父さんは屈んで話を聞いてくれる。

「いい。きっとこれは練習だから。私はこうしたことを通して人を愛する意味を知りたいんだと思う。」

「何かわかったのか...?」

「うん。道端でこんな事をしていても駄目だって事。あ、伯父さんもし私がこんなふうに道端でバカみたいに泣いていたらみっともないから、突き飛ばして止めさせてくれる? お願いね。」

「わかった。」

「ありがとう。」
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