Mostly, this is diary.
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ほんとだ。
言われるまま振り返ると塀に向かって佇む、さっきと同じオジサンが目に入った。
暗い色の柔らかい上着を来ている。
小柄な後ろ姿を見る限り、オジサンと言い切るには若いようにも思った。
私は甥の足下に両膝を落として座り込み、向かい合っていた。

「伯父さん、ごめんなさい。さっきも今も暗くてどなたかわからなくて、失礼しました。」

伯父さんは黙っていた。
あ、私こんなふうに座り込んだまま顔だけ向けて挨拶するなんて失礼だ。
ぐったり座り込んだまま、私は目の前の人の手を握っていた。
慌てて立ち上がろうとすると制止された。
背の高い甥は私を見下ろして言う。

「そのままでいいんだ。」

「でも、このままじゃいくらなんでも失礼だよ?」

「俺には失礼じゃないのか。」

「え...う、ん。失礼ではないと思う。ご挨拶してきたら駄目?」

私は慌てて立ち上って、その背の高い彼にそう声をかけた。
その時、伯父さんがおもむろに声をかけてきた。

「そいつはさっきお前のことを彼じゃないといいきったぞ。」

「そうなのか? 俺は別に気にしないよ。」

予期していた質問に答えるように彼ははっきりという。
彼は目線の低い私を少し睨むようにして言った。

「そうだよね。私も気にしないよ。」

知ってる。
私は彼の『彼女』じゃない。

「お前達は一体どういう関係なんだ?」

確かに伯父さんにはわからないだろう。
私は振り返って再び伯父さんを見た。
伯父さんは塀を見つめるのをやめない。
私、伯父さんにさっきかなりひどいこと言ったかな。
ちょっと興奮気味で何が何だかわからなかったし。
かなり嫌われてるんだろうな。

「どういうって、どういう関係でもないんです。それに、『知らない人』に自分の知ってることを全部言うわけにもいかないし。」

「じゃあ、お前は嘘を言ったんだな。」

伯父さんの滑舌ははっきりしている。
なるべく穏やかに私は答えた。

「私、嘘は言っていません。実際、甥御さんには他に彼女がいるのをご存じですか?」

「...。」

「それに私、嘘をつく正当な理由がないから。」

「じゃあお前は一体何なんだ?」

「何でもないんです。私が『何か』だったことは一度もありません。強いて言えば『お知り合い』でしょうか。」

私は僅かに俯いて、でも顔をまた上げた。

「そうなんだ。何でもないんだ。」

彼は嬉しそうに言う。
そうだ、こういう風に話すように私が言ったのかも。
私のすることに疑問を持たないように言ったのかも。

「そう。それに私、可能な限り嘘をつかない。特に5-6年前から。嘘着くとそのうえにまた嘘を上塗りしなきゃいけないから。それって面倒で辛いからやめたんだ。」

「そうか。」

「でも、矛盾してるけど『必要があれば』私も嘘をつくことがある。よほどのことがなければつかない。」

「...なんのことか俺にはわからない。」

彼はにこやかに話していた。

「そう? ...嘘の話なんだよ。要は相手を信じるか、信じないかだけ。信ずるに値する人を側に置くといいと思うよ。やっぱちょっと伯父さんとお話ししてくる。後悔しそうだから。」

彼は何も言わなかった。
私は彼の側を離れ、塀に向かい合う伯父さんに近寄って、2、3歩手前から伯父さんに声をかけた。

「あの、先程は申し訳ございませんでした。確かに私、自分から伯父さんにお会いしたいってお願いしたんです。でも故意にひどいことを言おうと思ったわけではないので、それだけはご理解ください。」

伯父さんは少し揺れたように思った。
頷いてくれたのかな。

「それから、塀に向かい合ってるのはきっと私が怖がったり驚いたりしない為のご配慮でしょうか。もし、そうなら大丈夫です。ご迷惑でなければこちらを向いてください。」

「...わかった。」

伯父さんは後ろを向いたままそういった。

「よかった。」

私は心から安心した。
それと同時に嬉しかった。

「伯父さん、お聞き及びかどうかわかりませんが、私ずっと昔から伯父さんに憧れていたんですよ。国営放送から初めて自分で購入した物は伯父さんの作品だったんです。何度も何度も繰り返して見ました。凄く良かったです。派手ではないけど、そのままが私は一番良いと思うんです。お会いできる機会があるなんて思わなくて嬉しかったです。そうした機会に恵まれたことを素直に感謝したいと思います。」

伯父さんは徐々に下を向いていった。
何か辛いことでも聞いているかのようだった。

「あ、何か私また変なこといっちゃいましたか? ごめんなさい。無理に聞かなくてもいいです。」

「本当に私か?!」

え?
私、肝心な話間違えた? 
誰か他の人の話だった??
いや、そんなはずはない。
伯父さんの声は大きかった。

「...はい。他の人のはずがないので...でも、違ってたらごめんなさいっ。もうやめませんか、こんな話。わざわざ出かけてくださってありがとうございました。じゃ...」

私は1歩遠ざかった時、伯父さんの声がまた響いた。
伯父さんは怒っているのか悲しいのか表情がわからなかった。

「答えなさい。『本当に私か?!』と聞いているんだ。」

「...購入した物の話ならそうです。他に意味はありません。」

「いやに明確に答えるな?」

「誤解のないように明確にしたまでです。他には何の意味もないんです。なんだか怖いです。」

「そうか。」

伯父さんは振り向くと驚くような行動に出た。
Hugをしてくれたのだ。
最初はわけがわからなかった。
背丈が同じくらいなので、まるで抱き合っているかのように見えたかも知れない。
暖かいな。
でも外国に住んで外国の人の文化に触れた私には嬉しい事だった。
日本人だと外国人に比べ、親子でふれあう機会も稀なのだがHugやKissなどの挨拶の習慣はどのくらい私を慰めてくれたかわからない。

「ああ、ありがとう。すごく嬉しい。それにね、すごく暖かい。なんだか私、ちょっと救われちゃったみたいです。ありがとう。」
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