Mostly, this is diary.
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足音は夜を刻むリズム。
私は脇目もふらずまっすぐ足早に歩く癖がある。
夜、帰宅するには人通りの少ない道を歩かなければならない。
時間を節約するため。
集中するため。

そうやっていつものように歩いていたとき、道路脇に壁に向かって立ってる叔父さんがいた。
暗い色の上着を着た小柄なその人は、こっちを見ているような気がした。

誰?

お互い犬の散歩で出会った訳ではないし、私を見ているであろう理由が見つからなかった。
大家さんはこの近くだけど、この人は大家さんより体が細い。
知り合いなら自分から声をかけてくるとは思うけど?
自分から声かけてみようかな。

「...こんばんは。」

むしろこっちを見ていたのは叔父さんの方なのに、その人はビクッと驚いた。
そして叔父さんは体を塀に向けたままこっちにゆっくり顔を向けた。
暗い色の上着の襟で顔がよくわからない。

「...こんばんは。私が、誰だかわかるんですかっ?」

叔父さんの言葉はひどく不思議なものだった。
誰だかって?
こっちがビックリするわ。

「...いいえ。そこに佇んでいらしたので、知り合いかと思いまして。ご挨拶しても差し支えなんじゃないかと思ったのでご挨拶したまでです。」

「...あなたはいつもそうやって知らない人に声をかけるんですかっ?」

咎めるような口調で塀に向かって佇む叔父さんはいった。
思わずムッとした。

「心外ですね。誰でもという訳ではありません。なんだか私のことを知っていらっしゃるご様子だったので、この辺には私のアパートの大家さんもいることですし、大家さんかもも知れないと思ってご挨拶したまでです。ご迷惑なら無視なさればいいじゃないですか。」

「なんて物の言い方だ! 育ちが知れる。」

なんで挨拶をして、知らない叔父さんに叱られなきゃいけないんだろう。

「挨拶して怒られたのは初めてです。」

「挨拶をしたのを怒ってるんじゃない。会いたいって言うからわざわざ出向いてきたのになんてもののいいぐさだ。」

会いたいって??
この人、変な叔父さんなのかな?
それとも家で怒られて飛び出してたまたま外に立っていて虫の居所が悪いのかな?

「知られて困るような育ちでもありませんし、誹られるような育ちでもありません。ましてや怒鳴られる筋合いは毛頭ありません。私に会いに来てくださったのなら正面からお話ししてくださればいいじゃないですか?」

「なんだと!私が誰だかわかった上で物を言ってるのかっ。」

叔父さんは声を荒らげていた。

「当然です。壁に向かって立ってる叔父さんでしょ。それ以上のことは知るよしもありません。もしかして、おじさん情緒不安定なんですか? それとも家庭で何かあったんですか。...誰も相談に乗ってくれないならお話聞いても良いですけど。」

「わしをバカにしとるのかっ?!」

まじめに話してるんだけどな。
しかも、このキレ具合。
この人、見ようによっては泉谷しげるさんぽいな。

「バカになんてしていません。至って真面目にお話ししております。でも理解して貰えないようですからこれで帰ります。話しかけないでくださって結構です。」

「後悔するぞッ!!!」

叔父さんはさらにキレる。
困るなぁ。

「いえ、あなたが国会議員でも大統領でも私は後悔しないと思います。」

「彼氏の伯父さんならどうなんだっ?」

「彼氏? それは困りますね。でも、残念ながら私は彼氏といえるほどの彼氏はいませんからご心配なく。」

叔父さんは完全に顔をこっちに向けている。
暗くてよく見えないが、穏やかな玉子型のフェイスラインに、口ひげ。
あれ、どこかで見たような...。

「確かに何処かで見たようなお顔ですね。誰か有名な人に似てると言われませんか?」

「...」

「その有名な人ならたぶん私は結構好きなんですよ。それじゃ、喧嘩した家族や奥さんと仲良くするなりしてください。じゃあ...」

まあ、世の中って不思議なことがあるもんだな。
まさか、ね。
まあ、ただの変な叔父さんじゃなかったんだな、きっと。
歩き始めたら、また叔父さんの声が聞こえた。

「待て!後悔するぞ。」

「しませんよ。するなら後でじっくりさせて貰いますぅっ。」


しかし、ただの変な叔父さんじゃなかったんだな、きっと。
歩き始めたら、また叔父さんの声が聞こえた。

「待て!後悔するぞ。」

「しませんよ。するなら後でじっくりさせて貰いますぅっ。」
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