Mostly, this is diary.
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死神?

あれは2002年。
にぼし犬にあった後の話だった。
夜の新宿を歩いてアパートに帰るのが日課だった。
日中でもそれほど人通りが多いとは言えない住宅街の道。
夜、ほとんど人通りが少ないその同じ道を通って帰っていた。

夜、暗い道で背後に迫る人物には誰でも恐怖を感じる。
しかし進行方向に現れる人物にどう対処したらいいんだろう。

「ずいぶん遅いんだな...。」

男の声?
...優しい声。

「誰...?」

右の路地から近寄ってきた背の高い人影。
無理にこちらに近寄っては来ないし、背後をとられていないからさほど恐怖もない。
月は出ていなかったように思う。
暗い道には所々に白い光を放つ街灯がついている。
もう一つ、優しいラインの人影が近くにあった。
女性だ。
この人達は私の知り合い?
不必要におそれる必要もないみたいだ。

「どちらさま、ですか...」

「また、忘れたのか?」

少しあきらめたような男の優しい声。
聞いたことのあるような...ないような。
忘れた訳じゃないんじゃ...?

「忘れたも何も暗いし、逆行で見えないんです。家族なら暗くても見間違えるはずもないけど。逆に言うと、家族でもないのにずいぶん遅い時間に...。私がここを通るのをご存じでしたか?」

彼は後ろを向いて帰ろうとする。

「あ、言い方が気にさわったのならごめんなさい。質問を変えます。どうしたの? こんな時間に。」

「...おまえの帰りが遅いからこんな時間に来るしかなかったんだぞ。」

「確かに。他の時間にいらしていただいてもゆっくりお話は出来ませんね。すみません。」

輪郭がみえる。
きれいな人。
顔がまだよく見えない。

「いいんだ。会いに来たのはこっちなんだから。」

誰なんだろう。
覗き込むように相手の顔をみる。

「こっちへ来ないのか?」

「近寄っても良いの?」

「どうして?」

「近寄ったら消えたりしないかと思って...。たぶん暗いのが怖いんだ。顔が見えないと不安。」

「...いいよ。おいで。」

私はゆっくり背の高い人影に近づいた。
女性は何も話さないまま様子を見守っている。
落ち着いた色のスーツ。
お母さんなのかな?

「なんだか...死神みたいだね。そんな暗い方へ呼ぶなんて。」

月が見あたらない。
最もどこもかしこも暗いのだが。

「俺は死神じゃないぞ。死神の役でもやるなら話は別だが。」

「うん。...わかってる。」

「わかった?」

「うん。」


人影は確かに私の知っている人物だった。
女性もその人の母だった。
どうして私、この人達を忘れていたんだろう。
彼は近くに立つと見上げるほど背が高い。

「やっぱり忘れていたんだな?」

あ、やばい。
顔に出して物考えていたのかな、私。

「ううん。そんなことないよ。気のせいだよ?」

「...お前にあわせたい人がいるんだ。」

「あわせたい人? 私に。」

不思議だ。
その人の顔は手がすぐ届く場所にあった。
この距離は友達の距離じゃない。

「どうしたんだ?」

「ううん。友達の距離じゃないんだなって思って...。でも何の抵抗も感じない。」

「抵抗?」

「うん。ほら、何も嫌だとか怖いとかそういった感じがないの。普通なら何らかの抵抗があってしかるべきだと思うんだけど。」

「難しい言葉を使うのが好きなのか?」

「...そういうわけじゃないけど。思ったことをそのままいっただけ。」

その人は私の左手を取って自分に押し当てた。
ああ、暖かい。
暖かいのを通り越して熱いくらいだ。

そうだ。
この人の体温は高いんだ。
私、この人を知っている。

「暗いのも悪くないね。落ち着くし。」

「暗いの、怖がっていたんじゃないのか?」

「平気だよ、もう。路地裏でも1人じゃないし。」

なんだ。
怖がる事なんてないんだ。
それにしても、寒い時期じゃないのに暖かいな。
どうしてこんなに気持ちいいんだろう。

「あ、そうえばさっき...あわせたい人がいるって言ってなかった? 誰?」

「もうあってるはずなんだ...。」

え?
あ...そういえばさっき...。

「そういえばっさっきこんなことがあったのっ...すぐそこで!」
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